建築家からのメッセージ
ホキ美術館は、1対1で写実絵画と向き合える場所を作り、公開したいという、保木館長の純粋な思いから生まれました。
昭和の森に隣接した敷地という自然の一部となれる場所を選び、自然光を展示空間へと導き入れることで森の中を散策しながら絵画を鑑賞しているような状態を作りました。
また、集められた写実絵画を鑑賞すること、食事をすること、ワインを飲むこと、森、光、自然、環境などあらゆる行為や事象を等価に扱い、再構成し、美術館でありながら美術館以上のものを考えることでもありました。
ホキ美術館のギャラリー計画は、所蔵作品である写実絵画を最適な環境で鑑賞できる空間への模索から始まりました。
細密画の繊細さを壊さないように、空間は可能な限りシンプルなものを目指しました。具体的にはプレーンな壁と絵画しか存在しないギャラリーです。
大きさの異なる1枚1枚の絵画へ最適な距離を確保すること、壁面の目地、ピクチャーレールやワイヤーを排除し、鑑賞時の視界には目の前の絵画以外、鑑賞の妨げとなるものが入らないように徹底しています。
また、展示照明は世界でも類を見ない全館ほぼLED照明を採用しました。LEDの特徴は長寿命で紫外線を発しないことのほか、特筆すべきは調光しても色温度に変化が無いことです。
今回は白色と暖色の2種類の色温度のLED照明を無数に混ぜあわせ、それらを調光することで、作家一人ひとりのアトリエの光環境に近いものを作り出すことができました。
また画家の要望によってはハロゲンを使用することも可能です。また器具自体を小型化し、器具単体の存在感を消しました。
φ64mmという小さな孔でLED照明の他、空調、排煙なども成立させることで、天井を構成する様々な要素をより抽象的に扱うことが可能となっています。
本建築は2009年にスペイン・バルセロナで開催されたWAF(World Architecture Festival)のfuture project 部門で最終審査まで残りました。(2010年11月)
日建設計:山梨知彦
施設概要
施設構成:展示室、ミュージアムレストラン(イタリアンレストラン「はなう」)、ミュージアムカフェ、ミュージアムショップ、収蔵庫
展示室数:回廊型ギャラリー3層7室
敷地面積:約3,860m2
延床面積:約3,720m2
展示室面積:約1,800m2
階数:地上1階地下2階
構造:RC造、一部鉄骨造
工期:着工2008年10月~竣工2010年9月
設計:日建設計
施工:大林組
ホキ美術館の建物が、社団法人 日本建築家協会による2011年度 優秀建築選公開審査会の結果「日本建築大賞」に選ばれました。また、「千葉市都市文化賞2011」、「千葉県都市文化賞」で優秀賞を受賞しました。