常設展 ギャラリー

ギャラリー8 [B2F] 日本の写実絵画を代表する現役画家14人の「私の代表作」を展示

日本の写実絵画を代表する現役画家14人の「私の代表作」を展示

ホキ美術館の代表画家14人が自由なテーマで自らがもっとも描きたい作品を100号以上で描きました。作品の横のスピーカーからは画家の制作意図や制作エピソードなどをお聞きいただけます。

野田 弘志 《「崇高なるもの」OP.6》 2016年

野田 弘志 《「崇高なるもの」OP.6》 2016年
人間の存在と真実を描く
私は現代の世界がどうであろうと、流行がどうであろうと関係無しに、存在を確と見つめ、真実を確と見据えていかなければならないと考えています。「崇高なるもの」OP.6は、総タイトルを「崇高なるもの」とし、シリーズで制作順に作品番号をつけており、これはその6番目になります。原則として作品の天地を2メートルとした着衣人物像の連作です。今回は2001年ノーベル化学賞を受賞された野依良治先生を描かせてもらいました。現在、科学技術振興機構研究開発戦略センター長を務めておられますが、包容力と温かさの中に底知れぬ凄さと強さを持ち合わせておられる。これが人間だと思いながら、その強く重い存在を、真実を現したく描いていったものです。(画家のことばより)野田 弘志

原 雅幸 《薄氷(うすごおり)の日》 2017年

原 雅幸 《薄氷うすごおりの日》 2017年
12年間通った日常の風景が呼び起こす共感
日常の風景を描くということ。それは俳人が俳句を詠むことに似ているように思う。絵と鑑賞者との間にお互いの記憶の共感が生まれ、更に深くイメージの世界が広がり、風景に意味が生まれる。この「薄氷の日」は私にとってまさに日常の風景である。娘を学校へ送り迎えするために12年間この運河沿いの歩道を通り、一年を通して日々の変化を観てきた。このボートハウスも様々な方向から描いた。絵になる場所はどこから観ても絵になるのである。1月の冷え込んだ朝、ナローカナルと呼ばれるこの運河に薄氷が張った。薄氷は運河に映る風景を凍らせ、時間が止まったかのような静けさだ。午後になり薄氷が少しずつ溶け出し、鏡面のような水面に微かな揺らぎが始まる。それを待ちかねていたかのように私のそばにいた1羽の水鳥が飛び込んでいった。水面が大きく揺らぎ、水映りの樹々の形がゆらゆらと崩れる。一瞬、その水鳥が私を振り向いたように思った。(画家のことばより)原 雅幸

羽田 裕 《初秋の桜島》 2017年

羽田 裕 《初秋の桜島》 2017年
30年描き続けた桜島とその変化
2016年11月18日鹿児島空港に降り立つ。気温は東京よりだいぶ高く、紺碧の空に太陽が輝いている。北方には秋色に色づいた霧島山が見える。逆光の桜島(北岳)の頂上から徐々に裾野が見え、波静かな錦江湾に浮かぶ桜島がみえてくる。“好景観道路”と呼ばれるだけあって実に美しい。標高1117mの雄大な北岳を目の前にして鳥肌がたつ。やがて噴火を続けている南岳が右肩から見えてくる。噴煙は穏やかだ。決めていた場所に到着。 30年ほど前から毎年、取材写生に来ている。毎年のように描き続けてきたがここにきて噴火を続ける南岳の中腹に砂防ダムがめだつようになった。初めて目にした大型ダムは、景観に配慮し褐色のコンクリートを使っていた。しかしその後のダムはすべて白色である。人間で例えると顔に白色絆創膏を貼ったようで見苦しい。画家は描きたくない物は描かないという方法があるが、写真家はシャッターを押さないと思う(画家のことばより)羽田 裕

小尾 修 《静寂の声》 2017年

小尾 修 《静寂の声》 2017年
時の流れが作り出す木の幹と生命を輝かせる女性の対比
長い年月をかけて深く地に根を張り、枝を伸ばし、やがて枯れ、朽ちて焼かれ、どす黒く焼け焦げた肌を持つ無骨な木の幹たち。しなやかで、優美な線を持つ、人生の中で最も生命を輝かせる瞬間を生きる女性の姿。その対比はそれぞれの違いを際立たせる。しかしそれらはまた、同じように時の流れが作り出す創造の一過程、また、2つとして同じもののないかけがえのない存在という意味で、私の目には全く同じ価値を持つものに映る。私はただそれらを画面に並べ、対比させ、観察し、描き写す。その息づかい、そのたたずまい、降り注ぐ光が戯れる様、そこに流れる空気のかすかな流れや屋外から聞こえてくる風の音……。絵具と筆で描き表せるものはその中のわずかなものかも知れない。しかし完成した作品の画面の奥底に、少しでもそんな私の感じる驚き、喜び、畏敬の念が宿ることを願う。(画家のことばより)小尾 修

五味 文彦 《像にそうて容に泣く 左》 2017年 五味 文彦 《像にそうて容に泣く 右》 2017年

五味 文彦 《かたちにそうてかたちに泣く》 2017年
現代を浅い空間で表現する
この作品は空間を浅くしてみました。深い空間は、人々の生活空間に豊かな物語が溢れている時代に即していると思います。それに対し、たとえば座敷童のような妖怪も昔の空想として括られてしまう今の時代には浅い空間があっているのかも知れません。リアリズムというのは語り継がれてきたものを剥いでゆくところが非常に面白い、そして作家としては赤裸々なものに冷たい蛍光灯の光を浴びせるようにして絵を造るのですが、その到達点で消しようのない裸の匂いを嗅いでしまうのです。作家はミニマムなイズムの綻びから溢れ出てくる情動におぼれてしまいます。(画家のことばより)五味 文彦

島村 信之 《夢の箱》 2017年

島村 信之 《夢の箱》 2017年
造形に惹かれ描いた21匹の昆虫の標本箱
これは国産クワガタムシ20種とカブトムシの標本を描いた作品で、その造形に惹かれ、群像美への挑戦となった。6、7年前に子どもと観察目的で始めたオオクワガタの飼育がきっかけでブリード及び標本収集が始まった。国産クワガタ39種の中から形態など特徴のある20種を厳選し、規定サイズの標本箱にバランス良く配置した。例えば上から1段目と2段目は原名亜種達で3段目は亜種といった分類である。標本用に昆虫の形を整える展足にも拘りを持ち、大半は自ら製作した。また標本のデータを作品傍に表示した。肖像画を描いた時の心境と少し似ており、対象を歪めることなく正確に接近して描いていく。ただ、知っていたつもりでも描くことでその姿がようやく見えてくるという新鮮な驚きが毎回あって、改めて生命の神秘を思い知らされた。この部位のこの形にはこんな役割があったのかという謎解きの時間を経てより愛着が増してくる。そういった思いや時間の集積が写真とは異なる魅力を放つことを願っている。(画家のことばより)島村 信之

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